~ 母は諦めない ~
子どもの交通安全教育について、管理栄養士の佐藤さん(二人の子をもつ母親)が話してくれた。
「自転車通学をしている高校生子どもには、繰り返し交通事故に注意するように話しているが、私の話など聞いているのかいないのか、……。
しかも、自動車の運転免許を取る計画をしているが、本当に大丈夫なのか、心配でなりません。
だから、口酸っぱく、伝えています」
子を思う母親の気持ち、これこそ、安全な交通環境を実現するために最も大切なものです。
私は、正直に言えば、子どもの大切さがよくわかっていなかった。 しかし、息子が結婚して孫が生まれ、息子の妻が示す母親としての愛情をみて、少しわかった気がした。これから長い人生を歩もうとする子どもの命の大切さ、ようやくそのことに気がついた。
その話を妻にしたところ、「遅すぎる! だからあなたは……」とひんしゅくを買い、私は、言わなければ良いことをまたひとつ学んだ。
さて、母親が交通安全の大切さを話しても、子どもは素直に耳を傾け、理解できるのだろうか。
私は、正直にそんな思いを伝えた。
「子どもの安全を願う母親の気持ち、その言葉は、子どもにとってはうるさく感じられるかもしれません。
本当に大切なものは、教えられても簡単には見えず、見つけることができないからです。
でも、いつか、それを見つける時が来る。その時、子どもの頃には素直に聞けなかった、母親の言葉を思い出すのです。
人は、自動車を運転することを通じて、考え、成長します。安全の意味、価値、そして家族の大切さ、命の大切さ、人生の大切さなど、大切なものがどれほどたくさんあるのかを知り、考え、人として成長する。そして、人として成長することを通じて、私たちは、安全運転を身に付けていくのです。
自動車とは、本来、安全な乗り物です。しかし、安全であるためには、止まることが前提となります。「止まれるから走ることが許される」、そう考えていれば、それだけで事故は半減します。
安全運転とは、運転技術だけの問題ではなく、人として安全の価値を認めることから始まります。
母親の言葉、今は嫌われるかもしれません。でも、その言葉は、子どもが成長して安全の価値を見つける、その時のために必要な、本当に大切なものだと思います」
私の話を聞き、彼女は頷いていました。そして、顔を上げて言いました。
「嫌われても、母は諦めません!」
そうですね。この言葉を支える母親の気持ちこそ、私たちは大切にしなければなりません。
私たちが安全運転を習慣とするために、交通事故のない安全な交通環境を実現するために、最も大切なものがそこにあります。