メルマガコラム 46
~ 伝えること ~
「交通事故に注意しましょう」という一般的な交通安全広報、あるいは、出合頭事故が発生した場合の、「もっと左右の安全を確認しましょう」という交通事故防止指導とは、はたして何を伝えているのかと思う。
誰もが交通事故を起こしていいとは思っていないし、被害者になりたいとも思っていない。だから自分なりに交通事故には注意している。そんな人々に向けられた「交通事故に注意しましょう」という交通安全広報は、結果として何も伝えていない。
出合頭の事故を起こした当事者も、その時、左右の安全を確認した。しかし、右から接近してくる自動車に注意を奪われ、左から来ている自転車に気付くことが遅れて衝突した。
この場合、「もっと左右の安全を確認しましょう」という指導では、こうした出合頭の事故を防ぐことはできない。
もし、そこが一時停止場所であれば、左右の安全を確認する前に、停止線の手前で確実に止まることを忘れてはならない。そして、左右の安全を確認した後、「必ず進行方向を確認してから、ブレーキを緩めること」を伝えるべきである。反対方向に顔を向けたまま、ブレーキを緩め、アクセルを踏み始めるドライバーは少なくない。
こうした具体的な原因に対する対策ではなく、ともかく事故するなという指示、その言葉は、安全管理担当者の責任回避のための詭弁である。
あれほど事故するなと指示したのに、事故が起きたのは、私の指示を守らなかった社員・事故当事者の責任だと主張して自らの責任を回避する。
そんな管理者こそ無用である。
管理者こそ、交通事故を防ぐための施策・対策について考え続けることが求められている。そして、管理者に期待されていることとは、管理者だけが百歩先に進むのではなく、百人の部下と共に一歩前進することである。
交通事故防止・安全運転という聞き慣れた言葉であればこそ、そこに確かな価値を見つけ、誰もが共感し、納得できる安全運転の価値について、自分の言葉で伝えることである。
管理者による、交通事故防止に向けた真摯な取り組み、伝えようとするその言葉こそ、社員の資質の向上につながり、それは会社組織全体の進化・発展をもたらすはずである。