メルマガコラム 57
~ 時間の約束 その1 ~
ビジネスマンとして、時間の約束は守らなければなりません。しかし、特に自動車での移動は、事故渋滞などの不確定要素が多く、予定通りに目的地に到着できるとは限りません。
真面目な営業マンのAさんは、事故渋滞があっても遅刻しないよう、いつも約束の30分前に到着するように計画を立て、出発していました。そして、取引先近くのコンビニで時間調整をして、約束の5分前に受付で来訪を告げることを習慣にしていました。
ところがある日、突然の交通事故渋滞に巻き込まれ、余裕として見込んだ30分も経過し、約束の時刻に間に合わないかもしれない状況になりました。
ようやく渋滞が解消した時、その場所からスピードを上げ、急げばギリギリ間に合うかもしれませんでした。しかし、Aさんが踏んだのは、アクセルではなくブレーキでした。
Aさんは、コンビニの駐車場に車を止め、取引先のBさんに電話をかけました。「すみません、少し遅れそうです。お時間をいただけませんか?」
Bさんは理由も聞かず「わかりました。約束の時間を30分下げましょう。あわてずにお越しください」と答えてくれました。
商談は30分遅れで始まり、無事、終わりました。Aさんは改めて遅れたお詫びを伝えると、Bさんは笑顔で話してくれました。
「Aさんは、いつも5分前に弊社の受付にいらしゃる。でも、そのためには、もっと早い時間に近くまで来て、時間を調整されているはずだと思っていました。
そんなAさんが遅れるというのですから、格別の事情があった、事故渋滞にでも巻き込まれたに違いないと思ったのです。
でも、Aさんは何の言い訳もされませんでした。
Aさんはご立派です。なかなかできません。私も見習わなければならないと思っています。
弊社は、そんな誠実なAさんと、御社と、これからも是非、取り引きさせていただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします」
Bの話を聞いて、Aは本当に嬉しかった。迷わずブレーキを踏み、正直に詫びたこと、それが正しかったことを確信した。
そして、これからもB社のために、これまで以上の、最高の製品を作り、納品しようと考えていた。
(以下、次号に続く)