運転を哲学する男 小林眞のコラム 45 命より大切な前髪 その2

メルマガコラム 45

~ 命より大切な前髪 その2 ~

 

(前号から続く)

私は続けた。

「交通事故は毎日どこかで発生し、1年間に2,600人以上の人の命が失われている。そして、加害者は、交通死亡事故の責任を背負い、自分の人生を失う。

かけがえのない命、人の人生が失われていること、それって、おかしいと思わないか?

人の命や人生の大切さは、数で数えるべきものではないけれど、交通事故は防ぐことができることを忘れてはいけない。

これまでの私たちは、ある程度の交通事故は仕方がないと考えてきたのではないか。

 

人と自転車と自動車が、それぞれ自由に動き回れば、必ずどこかで交錯して事故になる。それを避けるために必要なこととは、互いに譲り合うこと。

なのに、自動車も自転車も、そして歩行者も、自分が優先であるからと十分な注意もせずに走る。

 

交通事故を起こしたドライバーの説明、言い訳はずっと昔から変わらない。子どもが飛び出してきたから止まれなかった、そんな言い訳が繰り返されている。

子どもや自転車が飛び出して来ることを予想して、止まることのできる速度で走るべきだ。

見えなかったから仕方がないのではなく、見えるまで減速する、それでも見えなければ、止まってでも確認することで事故を避けることができるのに、それをしてこなかった。

これまで、防ぐことのできる交通事故を私たちは防いでこなかった。つまり、命の大切さについて、本気で考えてこなかった。

 

今こそ、交通事故を防ぐこと、安全であることの大切さを考えるべきだ。

本当に大切なものは、数えることも、見ることもできない。考えなければ、大切なものは見つけることができない。

その大切なものを見つけることが、人として成長することなのだと思う。

自分自身で、その大切さを感じること。そのために、皆さんは、苛立ちの中で、今を精一杯、生きていることだ。

いつか、前髪よりも大切なものを見つけたら、それを守り続けていてほしい。きっと、必ず、見つかるはずだから」

女子高生の顔に、笑顔が浮かんだ。

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